二年前の今頃、のび太たちは受験生だった。
だが、のび太は実行委員になり、秋に行われる文化祭準備に熱中していた。
のび太「ただいま~ドラえも~ん」
ドラえもん「おかえりのび太くん。今日もお疲れだね。」
のび太「みんなったらひどいんだ。『勉強したいから文化祭なんて適当でいい』って!」
ドラえもん「みんなの気持ちもわからないでもないけどね。」
のび太「でもさ、僕にとってもみんなにとっても中学生としての最後の行事なんだよ!?」
ドラえもん「君がいいようにするといいさ。最近の君は勉強も頑張ってるもんなぁ。僕は君が成長してくれてうれしいよ。」
…………
……
のび太(ちがうよ、ドラえもん。僕は、君がいたから……)
担任「進路希望の紙、まだ出してないの野比だけだぞー?早く出すように。じゃあHR終わりなー。」
スネ夫「……」
スネ夫「なぁのび太。」
のび太「スネ夫……」
スネ夫「なんかお前、高校入ってから落ち着いたよな。」
のび太「そんなこと……ないよ……」
スネ夫「と、ということでさ!帰りにスタバでも寄ってかない?お互い大人になったことだしコーヒーでも飲もうよ。」
のび太「いや……まだ進路希望出してないし、今日は遠慮させてもらうよ。」ダッ
スネ夫「あっ……」
スネ夫「高校入ってからっていうか、ドラえもんがいなくなってからだよな……」
のび太は何となく一人になりたかった。
去年の今頃もこんな感じだった。ドラえもんという友達がいなくなってから、燃えかすのように無気力になってしまった。中三の頃、学校行事にも受験勉強にも全力で取り組んだのが嘘のようだった。
ドン
のび太「あっ、ごめんなさい。」
???「あれっ、もしかして野比くん?」
のび太「出木杉くん……」
…………
……
出木杉「いやぁ、中学以来だね。」
のび太「……」
出木杉は都会の進学校に進学したが、今日は開校記念日で帰ってきているらしかった。
のび太は思い切って訊いてみることにした。
のび太「ねぇ出木杉くん。」
出木杉「何だい?」
のび太「出木杉くんはさ、卒業後の進路希望はもう決まってるの?」
出木杉「僕は、宇宙に興味があって、アメリカの大学に行きたいと思ってるんだ。高校もなかなか楽しかったよ。」
のび太「はは、さすが出木杉くんだ。それに比べて僕は何も決まってないし相変わらずダメダメさ……」
出木杉「何言ってるのさ?僕が高校を楽しめたのは野比くんのおかげなんだよ?」
のび太「え……」
出木杉「ほら、覚えてるかい?文化祭準備の時さ。」
…………
……
のび太「どうしてみんな協力してくれないのさ!」
出木杉はこのころ、正直のび太を鬱陶しく思っていた。
他の三年のクラスも適当にこなして終わらせようとする文化祭にどうしてここまでこだわるのか。さっさと終わらせて勉強に専念したいのが普通じゃないか。
のび太「そりゃあ僕たちにとって受験は大切だよ?でもさ、みんなで何かやるなんてこれが最後なんじゃないの?高校では離れ離れになっちゃう友達とも、好きな子とも、一緒に何かやれる最後のチャンスかもしれないじゃないか!!」
出木杉「……!」
出木杉ははっとしていた。普通なら綺麗事で片付いてしまうような言葉でも、のび太が言うと、言葉では言い表せない何かがあった。
それは、のび太がいつも一生懸命だからかもしれない。
出木杉「……はい」ガタッ
のび太「で、出木杉くん。」
出木杉「僕は、野比くんと一緒に文化祭やろうと思います。」
のび太「出木杉くん……」
ジャイアン「俺様だってそのつもりだぜ!」