友『なぁ、男?』
男『何だ?』
友『女さんって、可愛いよな?』
男『……あぁ、可愛いよ』
友『小学校から高校まで付き合いは長いけど、お前たち二人は付き合ってないって言ってたよな?』
男『あぁ……』
友『じゃあ、おれと女さんの仲を取り持ってくれないか?』
男『………………』
友『なぁ、良いだろ? おれ、女さんが好きなんだよ。真剣だぜ? あの人しかいないって思ってんだ。だからさ』
男『………………』
友『頼むよ……お前がさり気なくやってくれれば、女さんも警戒しないだろうからさ』
後輩女「それで取り持ってしまったんですか?」
男「断れなかった。友は彼女にとっても数少ない友人だったし、あいつも俺の友人だった。そこで断れば友が俺から離れて、彼女からも
離れてしまうかもしれない……それが嫌だった」
後輩女「女さんの為……ですか?」
男「あぁ……そう思って、二人きりにしたりした」
後輩女「自分の気持ちに嘘を吐いて……」
男「そんなもの……彼女の幸せに比べれば安いものだ」
友『興奮したよな、ベルギー戦』
女『そうだね、ワールドカップってあんなに盛り上がるなんて知らなかった』
友『そりゃ世界一のスポーツの大会だからな! 盛り上がらない国の方がおかしいって。それが日本でやってるなんてちょー興奮する!』
女『友くん、サッカー好きだもんね? 部活も頑張ってるし、夢はJリーガー?』
男『………………』
友『そうだなぁ……ガキの頃からいつかプロになれたらって考えてるよ。プロになって、凄い選手たちと同じピッチでプレー出来たらって』
女『子供の頃からずっと?』
友『そう、ずっと。……応援してくれるか?』
女『もちろん! 友くんならなれるって。男くんもそう思うよね?』
男『あぁ……俺も応援してるよ』
友『よし! 女が応援してくれるなら、次の練習試合で絶対ゴール決めるからな!』
女『友くんて守りの人だよね? ゴール出来そう?』
友『守り? 何それおいしいの?』
女『あはは、だめだよ。役割はしっかり守らないと』
男「友と話している彼女はいつも楽しそうだった。俺と話している時はそんなに笑わなかったのに……」
後輩女「………………」
男「その頃から、彼女の隣にいるべきなのは俺じゃないとわかってきた。俺は少しずつ二人から離れていった……邪魔しないように」
友『男、お前行かないのか?』
男『何に?』
友『TDLだよ。皆で計画したろ?』
男『あぁ……行かない』
友『何でだよ。卒業旅行だろ? 何で誰も一緒に行かないんだよ』
男『お前ら二人に遠慮してんだろ?』
友『あ、いや……だってよ、皆で行った方が女も喜ぶだろ? まして一番仲が良かったお前なら』
男『……俺なんか気にするなよ。あの子はもう友しか見てないんだから』
友『そんな訳ねぇよ。俺と二人でもお前の話が大半なんだよ。いつも楽しそうに話してる。お前が昔からしてくれたこととかをさ』
男『……俺の話なんてしてんじゃねぇよ。ちゃんとお前の方を向かせろよ!』
友『な、何だよ……?』
男『あいつが好きなんだろ!? じゃあ他の男の話なんてすんじゃねぇって言ってやれよ!』
友『お、お前、泣いて……』
男『男なんかに二度と連絡するなって言えよ! もう……もう俺と会うなっ言ってくれよ!』
後輩女「それからは……?」
男「高校卒業から一度も会ってない。連絡も来なかった。彼女からも、友からも……」
後輩女「二人がどうしてるかは知らないんですか?」
男「時々別の友人からちょっと聞くくらい。続いてることだけはわかってた……」
後輩女「………………」
男「でも……土曜日の夜に電話があった。連絡するなと言ったのに……」