後輩女「男先輩、そろそろ行きましょう」
男「うーん、俺が仕掛かりを処理出来ていないとは……」カタカタ
後輩女「十分前に同時に三つ来た案件は仕掛かりとは言いません。そもそもそんな短時間で処理出来ませんから
それはあっさりばっさり諦めるべきです」
男「一つは返信したけど……仕方がない、残りは木更津でやろう」ガタッ
後輩女「ドライブ中は仕事の話は無しですよ? あ、わたしを褒めるのは大いに結構です。むしろ褒めるべきです」
男「君は褒めても褒めきれないよ。一年目なのによくやってる」
後輩女「えへへ。早く行きましょう、今日は一番新しい社用車ですよね」
男「あぁ、この前の一番古いボンゴより遥かに快適だよ。エアコンもちゃんと効くし」
後輩女「あれはポンコツです。社用車とはいえ許せるレベルではありません。スクラップするべきです」
男「総務に訊いたら修理するらしいよ、あれ。また車が無かったらあれになっちまうんだな」
後輩女「あんな車でドライブしたくありません。男先輩、頑張って一番新しい社用車を取り続けてください」
男「あのね、仕事しに行くんだからね? ドライブがメインじゃないから」
後輩女「暖かくなったらお弁当作りますね。広い公園に行って芝生にシートをひいて、二人で食べましょう」
男「飴ちゃん舐める?」
後輩女「はい、飴ちゃん頂きます」
男「今日は天気悪いなぁ……昨日は天気良かったのに。高速乗るから雨は降らないでほしいね」
後輩女「明日も降らないでほしいです。明日は行きだけはわたしが運転しますから」コロコロ
男「今日も運転して良いよ? 君の好きな新しいノート」
後輩女「全力で遠慮しておきます。今日は男先輩に全てお任せです」コロコロ
男「出発するよ。シートベルト締めたね」ガチャッ
後輩女「もちろんです。男先輩が免停になったら一緒にドライブに行けませんから」コロコロ
男「突っ込みたい箇所が二点あるけど、もう突っ込まないよ。ラジオをかけよう」
後輩女「NACK5にしましょう。それが一番好きです」コロコロ
男「了解。NACK5って確か埼玉だよね。今から千葉に行くのに埼玉のラジオ聴くなんてシュールだね」
後輩女「このまま男先輩のおうちに行っても良いですよ? 千葉ですよね?」コロコロ
男「や、同じ千葉でも逆方向だよ。木更津はアクアライン通るからね」
後輩女「海ほたるに寄って行く時間はありますか?」コロコロ
男「ありません」
後輩女「暖かくなってきました。上着脱ぎますね」ヌギヌギ
男「暖房弱めようか?」
後輩女「いえ、そのままで良いです。暑くなったらもう一枚脱ぎます」
男「ブラウスを脱いだら下着じゃないの?」
後輩女「そうなったら男先輩の視線を独り占めですね」テレテレ
男「事故になるから暖房弱めるよ。俺も少し暑い。寒くなったら上着を着なさい」
後輩女「ドキドキして暑いんですか? 全然遠慮しなくても良いのに。事故になって二人とも死んだら一生一緒です」
男「……なんだかんだで君は生き残るような気がするよ」
後輩女「か弱い女の子に対して失礼ですね。もし男先輩だけが死んだら、一生わたしに取り憑いてくださいね」
男「発言する側が逆だよな。俺が『取り憑いてやる』じゃなくて君が『取り憑いてください』だなんてね」
後輩女「わたしだけが死んでも一生一緒ですね。もちろん二人とも生きていても一緒ですが」
男「あぁ、どっちにしても君が取り憑いてくれるのね。結局俺だけが死ぬしか選択権が無いわけだ」
後輩女「飴ちゃんもう一個頂いて良いですか?」
男「はいどうぞ」