「……しんのすけさん、元気がありませんね……」
「え?」
「顔が、憔悴しきってますよ?」
「……うん」
仕事中、あいちゃんにコーヒーを出した時、ふいに彼女が言ってきた。
「……何か、事情がおありなんですね……」
彼女の場合、黙るだけ無駄だろう。すぐに調べられる。
オラは、ことの次第を話した。心の内にある、思いも含めて。
「――なるほど。しんのすけさんも、辛かったでしょ」
「いや、オラがただ、最低なだけだよ……」
「そんなこと、ありません」
あいちゃんは、椅子を回転させ、オラの方を向く。
「人の気持ちというのは、そう簡単に割り切れるものではありません。時には、何かを恨みたくなるときもあるでしょう。
それは、いくら心が強くても、誰にでも起こり得ることなんです。
……ですから、今のしんのすけさんを、私は責めたりしませんし、軽蔑したりもしません。
その辛さは、あなたにしか分からないことなんです」
「……」
「……ですが、風間さんも、ひまわりさんも、しんのすけさんにとって、かけがえのない人ではありませんか?
それは旧来からの友であり、大切な肉親であり……どちらも、しんのすけさんという人にとって、大切な人なんじゃないんですか?」
「……うん」
「でしたら、努々忘れないで下さいね。
――二人もまた、あなたを大切に思ってることを……」
「……」
「……私が言えるのは、それだけです」
そしてあいちゃんは、仕事に戻った。
彼女の言葉は、とても響いていた。オラの心に、刻み込まれていた……