ひろし「へへっ、しんのすけには内緒だぞ。」
2人でゆっくりケーキを食べるなんて、ずいぶん久しぶりだ。
ひろし「うまいな。」
みさえ「ええ、」
なぜだか
会話が続かない。
2人とも、なにか言いたそうにしてはいるが
それを口に出すことに躊躇しているような感じだった。
みさえ「あと2ヶ月くらいね」
ひろし「え?」
みさえ「赤ちゃん。」
ひろし「ああ、そうだな。」
医師から癌の話を聞いてからもう半年近くたったのか。
あっという間だったような、長かったような…
みさえ「ねぇ…」
ひろし「ん?」
みさえ「赤ちゃん、大丈夫よね…?」
ひろし「え?」
みさえ「だから、赤ちゃんよ。」
動揺が隠せなかった。
顔に
態度に
言葉に
それは現れた。
ひろし「な、なに言い出すんだよ。大丈夫に決まってるだろ!」
みさえ「………」
ひろし「なにも心配することはないさ!ちゃんと元気に産まれてくるって!!」
みさえ「…そう、よね。」
ひろし「ああ、そうだとも」
みさえ「………」
ひろし「…………」
みさえ「ごめんなさい、今日は検査とか多くてちょっと疲れてるの。もう寝るわ。ケーキ…ありがとう。」
ひろし「ああ、じゃあ帰るよ。また明日な。」