ひろし「……」
みさえ「…まだ、死にたくない。」
目に涙を浮かべたまま
みさえは言った。
ひろし「………うん!」
みさえ「あなたぁ…」
ひろし「うん!大丈夫だ。きっと大丈夫。大丈夫に決まってる!」
みさえは知っていた。
自分のことを
…病気のことを。
ひろしはみさえに問いかけることはなかった。
わかっていたのだ。
きっと昨日の自分の態度を見て、不安から誰かから聞いたのだろう。
話した人を責めるつもりはない。
むしろ、謝りたいくらいだ。
こんな重大な責任を押しつけてしまったことを…。
みさえにすまない、とひろしは謝った。
隠していたこと
不安にさせたこと
自分がもっと強い人間だったら…!
そう思った。
みさえ「見て。」
そう言ってみさえは
ひろしに一枚の紙を渡した。
それは幼稚園の子ども達が書いた寄せ書きの一枚だった。
そこには、
クレヨンでこう書いてあった。
『オラ、はやくかあちゃんのごはんがたべたいゾ。はやくおうちにかえってきてね。まってるゾ!』
ひろし「しんのすけ…」
少しシワがあり
文字の色がぼやけているところがあった。
みさえ「この子にも、無理させたのね…」
すやすや眠るしんのすけの頭を、みさえは撫でた。
ひろし「しんのすけは強い子だ。俺やオヤジ達の前で泣いたことがない。……まだ5歳なのに。」
ひろし「…情けないなあ。」