人並みの欲はあったけど、彼女を対象にする事は物凄い悪のように感じてて。歯止めになってた。
結局「お兄ちゃん」と言う立場に安住してた頃だと思う。彼女は不満かもしれなかったけど。
卒業試験と就業研修。肩で息しながら何とか走りきった感じ。ギリギリっぽいけど合格貰えて。
卒業と資格取得と就職決定。親父に報告したら、突然引っ越すように言われた。
アパートの持ち主が変わって土地が売りにだされるとかで、退居の要請が親父の方にあって。
敷金返還と引っ越し費用の負担の他に生活準備金?だったかを提示されてて。
親父は揉めるのも面倒だと感じてて。俺も無駄に時間取られるのは嫌だったから、
急な事だし住み慣れてたから残念ではあったけど、あのアパートを出る事にした。
彼女にその事話したら「…また遠くなっちゃいます?」予想通り、不安げな目向けられて。
「近くで探すよ。」初めからそうする気だったから、普通に言ったら安心してくれて。
彼女が休みの日に、一緒に不動産屋行って。まず市営から近いと言う条件で探して貰って、
その中から俺でも払えそうだった家賃の物件を抜き出して。彼女に「決めてよ。」言って。
「私がですか?」「いいよ好きなとこで。」「決めちゃいますよ?」「頼むよ。」
買い物にせよ何にせよ、何かを選ぶ事が苦手で。あのアパートに住むようになったのも、
学校に近い物件探して貰って一番最初に出てきた所が予算に合ったからと言うだけだった。
結果的にはその適当さのおかげで彼女一家と出会う事になった。不思議な縁だと思う。