少女「ひっ……ひっ……」 グズグズッ
男「泣くなよ、な? ほら、そこのソファーに座ってろ。今飲み物持ってくるから」
少女「うぅ……」 グズグズッ
男(障害のある子なのかなぁ。どこに連絡すればいいんだろ) コプコプッ
少女「……おっきいてれび」 グズッ
男「あのくらい普通だろ。観るか?」
少女「……」 コクリッ
男「よいしょ」 ポチッ
少女「きゃっ!?」
男「どうした?」
少女「すごい。きれい」
男(安物なんだけど、貧乏な家庭の子なのかなぁ)
少女「あの」
男「今度は何?」
少女「そこにあるしかくいの、なんですか?」
男「スマホ? 触ってみる?」
少女「……わっ、わわわっ!?」
男「何?」
少女「なんですか、これ! さわって、ひかって、なんですか!?」
男「音楽も流せるよ」
少女「……みらい」
男「未来?」
少女「ここ、みらい、なんですか?」
男「……はい?」
少女「ここ、わたしのいえです」
少女「わたしのいえなんです。おなじなんです」
少女「おむかいさんのいえも、おなじでした」
少女「わたし、この、すまほってしりません」
少女「こんなの、ないです」
少女「けいたい? なんですか、それ」
少女「いま、いつなんですか?」
少女「……30ねんごです」
少女「ここ、30ねんごです」
男「……」
少女「……」
男「そ、そう、なんだ……」
少女「……」
男「うん、じゃあ、まずは君のお父さんとお母さんを探してもらおうか」
少女「しんじてください」
男「大丈夫、大丈夫だから。警察の人ならすぐ見つけてくれるから」
少女「ほんとうなんです」
男「信じてるよ、うん」
少女「……どうして、しんじてくれないんですか?」