男「はぁ。じゃ、正直に言うよ。信じられるわけないでしょ」
少女「なんでですか?」
男「タイムスリップってことだよね、それ。ないよ、そんなの」
少女「でも」
男「何か証拠はある?」
少女「……」
男「ないよね。悪いけど、そういう冗談はおうちの人としてくれるかな」
少女「うっ、うぅぅ」 グズグズッ
男「泣かれても困るって。それに30年前って、ここはじいちゃんばあちゃんの頃からうちの家だったしさ」
少女「……もしかして、おじいちゃんは祖父、おばあちゃんは祖母、ですか?」
男「ちょ、ちょっと待って。なんで知ってるの?」
少女「わたしは、少女です。いもうとは――」
少女・男「――母」
男「頭が痛くなってきた。君が俺の伯母さん?」
少女「たぶん」
男「手の込んだ冗談だね、俺の祖父母の名前まで調べるなんて。でも俺に伯母さんなんていないよ」
少女「そんなはず、ないです」
男「あるんだよ」
少女「ないです!」
男「あー、もう、わかったよ。じゃあ君の妹に聞いてみよう」
少女「……」 コクリッ
男「……あ、母さん?」
母『どうしたの、何かあった?』
男「いや、何もないんだけどさ。ちょっと聞きたい事があって」
母『聞きたい事? 何よ?』
男「あのさ、母さんって、一人っ子だよね? 俺に伯母さんがいたりは、しないよね?」
母『……』
男「母さん?」
母『誰から聞いたの?』
男「えっ?」
男「……うん……うん……うん……ありがと……ごめん、それじゃ」
少女「どう、でしたか?」
男「答えを言う前に、君に聞きたい事がある。君、今いくつ?」
少女「10さいです」
男「ああ、そう。そっか」
少女「どうかしましたか?」
男「信じたくないけど、君は多分、俺の伯母さんなんだろうね」