「どうしたの?」
「えっ? なにが?」
「さっきから、上の空だけど」
「いや、なんだろ、風邪かな?」
いかん。全然集中出来ない。意識してしまう。
「大丈夫? 熱は……」
「ふぁっ!? な、なにするだっ!?」
おもむろに、額に手を当てられ、狼狽すると。
「熱いわね。今日はここまでにしましょう」
「だ、大丈夫だって! 元気だから!」
「いいから、明日に備えてゆっくり休んで」
有無も言わさぬ口調に頷くことしか出来ない。
「病欠は認めないから」
「はい、這ってでも行きます」
「よろしい。楽しみにしてるわ」
不敵な笑みに不安を感じながら、思い返す。
『明日、私とデートしなさい』
これが、ガリ勉に突き付けられた交換条件。
なんでも、一度は体験してみたいとのこと。
こいつも一応、色恋に興味があるらしい。
恐らく、さっきの少女漫画の影響だろう。
俺としては背に腹は代えられず、承諾した。
だから明日は2人で街にお出かけするのである。