さて、十日後。
このあいだに俺と会長は一度も会ってない。
そのことを先輩に言うと「バカヤロー」と俺を小突いた。
「てっきり、いっしょに下校ぐらいはしてるのかと思ったわ」
「そんなわけないでしょ」
「で? ほかにはなんかあった?」
「びみょうなウソをついてるぐらいで、特になにもしていないです」
「本当にほかになにかないのか?」
先輩が顔をグッと近づけてくる。
俺は会長に関連したエピソードを無理やりひねり出した。
この日の休み時間のこと。
みんなでダベっているところに、担任のアオヤマが入ってきた。
「誰か生徒会に立候補するヤツ、いないか?」
日本史担当でありながら、体育教師にまちがわれる担任の言葉には、
みんな、てきとうにしか反応しなかった。
ただし、俺だけは露骨に反応してしまった。
生徒会=会長。
そのことを話すと、先輩は口をとざした。
間違いない。この人はなにか俺にとってよからぬことを考えている。
「お前さ、役職はなんでもいいから立候補しろよ」
予想どおりだった。