なんでも、今回の生徒会選挙には会長も立候補するらしい。
しかも会長に立候補するヤツはひとりもいないらしい。
つまり、彼女の当選はほぼ確定している。
「お前も当選しろ。そうすりゃ、あの子とお近づきになれるぞ」
実のところ、人前で話すのはそんなに苦手じゃない。
中学のときは調子に乗って、生徒会をやったことがある。
ただし、条件がまったくちがう。
俺の通っていた中学は、ド田舎で生徒数がかなりすくなかったし、
顔見知りじゃないヤツを探すほうが大変なぐらいだった。
それにたいして高校は、1200人は確実にこえている。
そもそも、なんで先輩は俺と会長を仲良くさせようとするんだろ。
「ていうか。まず受からないですよ」
俺の言葉に先輩は首をふった。
「なんの考えもなしに、立候補しろなんて言うわけないじゃん」
今度は俺が首をふる番だった。
この人が断言したことは、まず外れない。
つまり当選してしまうってことだ。それは困る。
「じゃあわかったよ、当選しなくてもいい。立候補だけしな」
「なんでですか?」
「お前にとって利益があるからに決まってんだろ」
次の先輩の言葉を聞いて、俺は「なるほど!」と声をあげた。