しかし告白したからと言って、すぐになにか起きるわけじゃない。
大きな変化は会長に告白した十日後だった。
ちなみにこの十日の中で、例のバイト先にもう一度行っている。
口座番号を伝えるついでに、金の基準について聞いてみたかったからだ。
「ご足労をわずらわせて申し訳ないけど、それだけは教えられないんだよね」
「じゃあなになら教えてくれるんですか?」
「世の中には質問しても、教えてもらえないことがある。……ってことかな?」
例のおっさんが唇をゆがめた。イラっとした。
俺は洋画や小説に出てくるような、
気取ったしゃべりかたをするヤツが、だいっきらいだった。
「まあお金を手に入れるコツは、コツコツとだますことだね」
「ありがとうございました」とおっさんに言って、薄汚いビルをあとにした。
帰りに本屋に寄って、一時間だけ立ち読みしてから家に帰った。