そのことを伝えると、
「大丈夫だよ、ちょっとしゃべって簡単なテストして、
合格だったらそのときに履歴書とか書いてもらうから」
おっさんはそう答えた。
でも、そう言ったくせにおっさんは全然話そうとしないわけ。
沈黙が気まずくて、俺から口を開いた。
「ここのバイトって人をだましたらお金がもらえるって聞いたんですけど」
俺がそう言うと、おっさんはいきなり、
「いいですね、キミ」って俺を人差し指でさした。
「は?」
「まずここで話せなかったら、帰ってもらってたよ」
おっさんは俺から口を開かなかったら、
この時点で本気で帰ってもらうつもりだったらしい。
それから、おっさんはバイトについて話しはじめた。
「このバイトはね、難しいことはなにもないんだよ」
「人をだます仕事って聞くと、ついつい構えちゃうでしょ?」
「だますって言うより、ウソをつくって考えたほうがいいなあ」
「誰でもいいから、その人にたいしてウソをつく」
「キミはそれだけで、お金がもらえる」
「いやあ、いいバイトだねえ! こんなのなかなかないよ!」