「演説慣れしてるんだね」
図書室を出て中庭につくと、会長は俺にそう言った。
「会長さんのほうが慣れてるじゃないですか。ボク、感動しましたよ」
本心だった。俺は会長の演説を、もう一度聞いてみたいとすら思っていた。
「それ、本気で言ってるの?」会長が目を丸くする。
目が大きい人って、表情の変化がわかりやすいんだよ。
「ホントです。会長が演説したら、みんな顔をあげたんですよ!」
「キミもわたしが演説するまで寝かけてたよね」
会長に笑われて、俺は顔をこわばらせた。
「あまいなあ。見てないと思った?」
会長はニヤリと笑った。
のちのち知ることになるんだけど、この人はけっこう個性的な人なんだ。
「でも、どうしてボクを見てくれてたんですか?」
「やだあ!」と会長が俺をどつく。けっこう威力がつよかった。
「あの。けっこう痛いっす」
「ご、ごめん。だいじょうぶ?」
「だいじょうぶです。それで、なんでですか?」
「だってナガタくん、わたしに告白したでしょ」