言われるまで、本気で自分が告白したことを忘れていた。
そうだよ、俺は会長にウソをついていたんだ。
ここから先の会話は、完全に覚えている。
「ひとつ聞いていい?」
「なんですか?」
「どうしてわたしに告白したの?」
答えられない俺に、さらに会長がたたみかけてくる。
「なんの理由もないの?」
俺は思わずこんなことを言っていた。
「よくそんなことを、ストレートに聞いてきますね」
「わたし、遠回しなのはあんまり好きじゃないからさ」
俺は足りない脳みそで必死に考えた。
「いや、なんていうか一目ぼれに近いものなんです。
日ごろから壇上に立ってる会長さんを見てて、すげえなこの人って思ってて。
気づいたら好きになってました」
文章にするとサラッと言ってるように見えるけど、
実際に言い終わるのには、そうとう時間がかかった。