俺が言ったことは、ほぼウソだった。
そしてメチャクチャだった。
今日の演説を聞いて会長は、俺にとって完全に『遠い人』になっていた。
「キミもかなりすごいことを言ってる気がするんだけど」
「言われてみると」と俺は頬をかいた。
「もしかしてけっこうチャラいの?」
「ボクがチャラかったら。世の中の人、みんなチャラいですよ」
「わたし、キミが思ってるような人じゃないと思うよ?」
会長は続ける。「けっこう性格もアクがつよいって言われるし」
「それでもいいわけ?」
「なにがいいんですか?」
「わたしでもいいのかってこと?」
会長の言葉を理解できないまま、俺は人生で一番深くうなずいた。
けっこう沈黙の時間が続いた。
「よし、わかった」と会長が俺を見た。
緊張したように深く息をすうと、会長は言った。
「つきあおっか」