話が終わると、地味なお姉さんはお辞儀をして満足そうに部屋から出ていった。
「あー、落ちたな」って俺は目の前の机にうなだれた。
でも結論から言うと、俺は合格してしまった。
「え? オッケーなんですか?」
「うん、よかったよ。なかなか素質あるね、キミ」
優しそうなおっさんという最初の印象は、すっかり胡散臭いものになってた。
ていうかあのお姉さんとのやりとりで、なにがわかったんだよ。
それからはあっという間だった。
書類に簡単な個人情報を書いて、ケータイアドレスの登録をする。
口座番号については後日でいいって言われた。
で、おっさんから腕時計を手渡された。
Gショックのワインレッド色の時計だった。
「これ、このバイトやってるときはできるかぎり、つけておいてね」
「ただの時計ですよね?」
「キミのバイト代を決める時計だよ」
俺はもうなにも言わなかった。
まあなにはともあれ、俺の新しいバイトは決まったわけだ。