僕はしんのすけの自宅に電話をかけることにした。小さいころ何度もかけたその番号は今でも忘れずに覚えている。
『はい、野原です』しんのすけのママの声。
「あっ、風間です。しんのすけお願いします」
『えっ?しんのすけ?うちにはそんな子いないわよ?風間くんもしかして間違い電話?』
頭が真っ白になった。何故みんなしんのすけのことを忘れてしまったのだろう。
まるで最初からしんのすけなんて存在しなかったように。
しんのすけの寂しげな表情を思い出した。
忘れられない夏にしたい……そう言っていたしんのすけ。
彼はどこにいってしまったのだろう
家に帰ってアルバムをめくってみた。でも写ってるはずのしんのすけの姿はどこにもない。
何故?
どうしてしんのすけのいた証がすべて消えているのだろう
僕はみんなで埋めたタイムカプセルを思い出した。
『今年の夏をそのまま保管できる気がして。俺たちの過ごした証っていうか…この夏一緒にいたんだよって』
寂しそうで悲しそうだったしんのすけ
もしかしたら、あのタイムカプセルだったら、しんのすけのいた証が残っているのでは……そう思った。
だがいま開けてしまうと、僕もしんのすけのことを忘れてしまう気がした。
しんのすけが何故あんなにも思い出を作りたかったのか。
忘れないでほしいと言っていたしんのすけ。
ボクまでもがしんのすけのことを忘れたら、しんのすけが、かわいそうな気がした。
日曜日、僕はひまわりちゃんと会う約束を、していた。
いつも元気いっぱいの彼女が今日はなんだか寂しげに見えた。
「この間、風間さん私に変なこと言ったでしょ?あれ?しんのすけは?って。君のお兄さんのしんのすけは?って」
うつむき加減にひまわりちゃんはそう言った。
「風間さん変なこと言うなって。私が一人っ子たって知ってるのに。それをね、うちに帰ってママに言ったんだ。風間さんがこんなこと言うんだよーって。そしたらママ急に真顔になって……」
そこで息をひとつはくと、握っていた僕のてに力を込める