だが、僕は自分の家の前をスルーした。
メリーさんの家は僕の家のすこし先
5分と言ったところだろうか。
民家が立ち並んでいる場所で自転車を降りた。
メリーさんと共に中山の表札を探す。
お世辞にも大きいとは言えないが
アットホームな家の玄関に掲げられた中山の文字。
「ここだ…」
メリーさんはずっと僕の背中の裾を掴んでいる。
押すよと、一言いい。僕は呼び鈴のボタンを押した。
インターフォンが無く
呼び鈴だけのシンプルな物だったので
僕とメリーさんはドアが開くのを待った。
やがてガチャリとドアが開く。
鍵は掛けていなかったらしい。
地方の片田舎の家じゃめずらしくもない。
中から出てきたのは中年のおばさん
おばさんというわりには若々しく美人だと思ったが
すこしやつれているようにも見える。
「どちらさまで?」
声が少し枯れているようにも思える。
「准さんの友達です…すみませんが
お線香をあげさせてもらえないでしょうか」
「准の…ありがとうございます、さぁ上がって」
僕は中へと案内され、今の片隅に作られた
真新しい仏壇の前に座った。