「ええ、もちろん」 とまたカホは笑う。
「じゃあ、どうして!?」 と私は思わず声をあらげた。
「幸せになるためよ」
カホ自分の腹部へと視線を落とし、
そのまま自身の手を腹部へともっていく。
「どんなことをしてでも、なにをしてでも」カホの声が冷たくひびく。
「わたしはわたしの幸せを手に入れるの」
「どんなことをしても……?」
「ええ、どんなことをしても」
幸せになる。
カホが自分に言い聞かせるように、もう一度言う。
その言葉はしばらく私の鼓膜にこびりついて、はなれなかった。
「……とまあ、だいたいこんな感じなわけ」
私は話すのをやめて、カクテルを思いっきりあおった。
「先輩、飲み過ぎじゃないですか?」
後輩の声がぼんやりとしか聞こえなかった。
この時の私は、たぶん酔っていたのだろう。
「それで? そのあとはいったいどうなったんですか?」
「お父さん? 死んだよ」
後輩の顔がかたまる。
予想通りのリアクションだった。