それは、
ある人から結婚を申し込まれたから。
その人とは1年くらい前から
つき合っていて、
お互いそろそろかなと
思っていたらしい。
でも彼女は10年以上前の
この約束がずっと胸に
引っ掛かっていたとか。
だからそれを断ち切るために
ここに来たという。
せっかく再会できたのに…俺、涙目。
いくら仲が良かったとはいっても
10年以上も昔の話。
目の前に座っている彼女は
普通なら俺なんかとは
接点がないくらい美しい女性。
そんな年頃の女性がフリーなわけがない。
対する俺は29年間彼女ナシの地味男。
ステルス化が進んでしまい
最近は世間の女性から
俺は見えなくなっているらしい。
もう勝ち目ナシと判断。
だから昔話を打ち切って
現実の世間話モードへ移行。
天気の話とか天気の話とか天気の話とか。
つまり、どうでもいい内容。
昔はヒッキーでしたけど
社会人になってからは
一応世間話くらいはできるくらいまで
進歩してましたし。
俺はこれでお互いイイ思い出で
終われると思ったわけです。
美しい女性と再会ができた上に
二人でお茶をして
少しだけ懐かしい話が
できただけでもう十分。
好感度とまでは無理でも最低限、
思い出を壊さない状態で
お別れすることを目標に
頭をフル回転。
先に続くような話は一切しない。
話をすべて今日でオチがつく
方向にもっていこうとしてました。
そんな逃げに入ってる俺を
彼女が悲しそう表情でのぞき込むわけです。