しかし、程なくして女将から連絡があった
女将は従妹を探し、人形を返すことができたらしい
従妹は病に伏せり寝たきりだったが、息子夫婦の家に引き取られ暮らしていた
人形を見ると、とても懐かしがり喜んだ
従妹の故郷の数少ない思い出の品だったようだ
涙を流して女将に礼を述べたという
年のせいか、評判よりずっと丸くなったようで、感じのよい老婆だったとか
息子夫婦も好感の持てる人物で、これをきっかけに親戚付き合いが戻るかも、と女将は喜んだ
しかし、女将が人形を返してから一週間もたたないうちに訃報が届いた
従妹が亡くなったそうだ
女将は人形が従妹の最後によりそうために、私たちを頼ってきたのかねえ、と語った
オレはにわかに全てを消化することはできなかったが、なんとなく物の縁や人の縁に触れることができた気がして、まんざらでもなかった
しかし、この一件は終わってはいなかった