俺はその日から冤罪の恐怖を植え付けられた。
このゲロった女性が始めに俺の隣に座ってきた時、
避けるように窓際に寄ったのはその名残だったと思う。
女性「はい?」
俺 「あ、いや。色々とお節介だったかなって思ってたので。」
女性「?? いや、そんなわけないじゃないですかw ホントに感謝してますから。」
俺 「…だったら、よかったです。」
女性「ははw」
女性が微笑んでくれて心底ホッとした。
言葉に例えるのが難しいけど本当にホッとした。
俺は今日このホームで女性と再会した瞬間逃げ出そうと思った。
罪の事が頭から離れない俺はいつかこのゲロッた女性が現れて
「ドサクサに紛れて私の身体触ったでしょ!!」と
俺を引っ立てにこないか不安と恐怖を抱えていた。
親切心で介抱してあげたのだから、そんな筈が無いと思ってはいても
別に女性に介抱を頼まれたわけでもない。
それに身体を触ってまで色々してあげる理由もなかった。
だから俺はホッとした。
この女性が俺に対して心から感謝してくれていた事に。
女性「それに、私の事かばってくれましたよね?」
俺 「え…?」
女性「私に袋を渡してくれたり、背中摩ってくれたり、顔にタオル被せてくれたりとか」
俺 「……。」
女性「あと、私に『大丈夫、大丈夫。』って言って励ましてくれたり。あれはホントに嬉しかったです。」
俺 「…え……??」
女性「見ず知らずに人にここまでやってくれる人がいるんだってちょっと感動してたくらいです。」
俺 「あ、…いや…。」
なに言ってんだこの人。
俺は内心で「運わりぃ~」とか「早く帰りてぇ…」だの思ってた腹黒だぞ。
別れたあとトイレですぐ手洗いうがいしたし。