「俺のこと、好きってずっと言ってくれてたのはなんだったわけ?」
「浮かれてる間も毎日すきすきいってくれてたんだよね。
これから、嫁がすきっていっても信じられないよ。
何で、恋愛相談をAちゃんにしながら俺にすきとか言えるの?」
結局責めてしまった。
嫁は歯を食いしばって泣くのをこらえてた。
ふだんちょっとしたことで感動して泣くくせに、
とにかくふーふー言ってしばらく無言。
しゃべりだそうとしてまたこらえて、の繰り返し。
「あなたのことが好きだから結婚したし、ずっと好きでいたかった。
結婚しても、あなたのお父さんみたいに
私のことを30年先にものろけてくれるような、そんな夫婦でいたかった。
だから好かれたくていろいろやってきたんです。」
ああ、過去形だ。と思った。
「あの人のことが気になり始めたときに、厄介なことになったと思った。
自分でぶち壊すことになるんじゃないかって思った。
だから、仕事やめて関係を切り捨てるか、1回やって収まりつけられたらいいって思った。」
嫁は秋口から冗談めかして転職か、
いったん会社を辞めて子作りしたい、という話を口にしていた。
今の仕事は残業も多いし、
将来的に子供がほしいなら卵子がまだ若い今のうちに作ったほうが良いと思う。
ただ、俺は正直、嫁さんの今の会社での評価や給料のよさを思うと
そこまで極端に走らんでいいんじゃないの。と思ってた。
「一回やって」はひどいけど、
ただ嫁が冗談めかした言葉の裏にはこういう事情があったんだな、とは思った。
俺は嫁と会う前に決めてたことがある。