しずか「ええ、出来るけど……」
出木杉「僕が奴を止める。その隙に君はこの車に乗って逃げるんだ。のび太くんか剛田
くんに連絡を取ってスネ夫くんを助けに行ってくれ」
しずか「そんな!出木杉さんが危ないわ!!」
出木杉「大丈夫、僕は柔道をやってたから……それに、本物のスネ夫くんが怪我をして
る。早く助けに行かないと」
しずか「……わかったわ」
出木杉「よし、合図でいくよ。1……2の……3!!」
しずかは運転席のドアをあけ素早く車に乗り込むと、キーを回した。
二人の意図に気づいた偽スネ夫が、ボンネットを飛び越えるようにして襲い掛かってきた。
その偽スネ夫に鞄を投げつけると、出木杉は包丁を持った手に組み付く。
偽スネ夫「くそ、離せ!!」
出木杉「離……すもんか!しずかちゃん……急いで!!」
しずかは頷くと、アクセルを踏み込む。少しばかり無茶なスピードで、車が発進した。
しずかが無事逃げたのを確認すると、出木来杉は偽スネ夫の鼻に肘鉄を叩き込もうとした。
が、偽スネ夫は一瞬早く身を引き、出来杉と距離をとる。
偽スネ夫と出来杉は少し間合いを取って向き合う。
突如、偽スネ夫は出木杉に背を向けて走り出した。
そのまま駅の駐輪場へと逃げ込んでいく。
出木杉「!? 待て!!」
すぐさま後を追って出木杉も駐輪場へ入った。駐輪場は暗く、
雑然と自転車が置かれているため見通しが悪い。
周囲を見渡していると、右後ろから物音がした。偽スネ夫が包丁を持って向かってくる。
出木杉はすばやく偽スネ夫を掴むと、軸足を素早く踏み出しもう片足で偽スネ夫の足を刈り上げた。
大外刈り、一本。頭から落ちる危険な技だが、ロボット相手に容赦も何もなかった。
鼻のボタンを押そうと手を伸ばし、出木杉は手を止めた。
偽スネ夫「これでも押せるかい?」
偽スネ夫は、どこかのバイクから拝借したのかフルフェイスのヘルメットを被っていた。
これでは、鼻のボタンは押せない。
一瞬の隙を突いて、偽スネ夫が包丁を振るう。
慌てて出木杉は身を引いた。先ほどまで出木杉の顔があった位置を包丁が通過する。
出来杉(くそっ!ボタンが押せない!!)
出木杉はとっさに周囲の自転車を引き倒した。
無数の自転車が偽スネ夫の上に倒れてくる。
自転車に動きを封じられた偽スネ夫から離れると、
出木杉は駅へ向かって脱兎のごとく逃げ出した。