そう言いながら棺へと近寄る弟くんの姿が悲痛すぎて、今でも鮮明に覚えています。
静まり返った会場、そこでお姉さんがそっと弟くんの肩を抱き、言葉を口にしました。
「お父さん、今から天国へ行くんだからしっかり見送ってあげよ。」
「私たちがいつまでも泣いてたら、お父さん私たちのことが心配で安心して行けないよ。」
「天国へ行っても、お父さんのことだから私たちのことをずっと見守ってくれていると思うよ。」
「下手くそだけど、キャッチボールはお姉ちゃんが付き合ってあげるから。」
「一緒に練習して、野球が上達した姿、天国にいるお父さんに見せつけてやろうよ。」
「だから、二人で頑張っていこう?」
それを聞いた弟くんは、歯を食い縛り右腕で顔を隠しながら小さく頷き、
お姉さんに連れられて席へ戻っていきました。
この光景を見ていた参列者の中にもつられて涙を流す人がいて、
私も思わず涙が溢れ出てきてしまいました。
今でも家事と仕事の両立で大変そうですが、
時間を作っては弟と一緒に野球の練習をしていると笑顔で話すお姉さん。
お葬式の時もそうですが、自分が一番つらいはずなのに歳の離れた弟のために弱い姿を見せず、
毅然とした態度を崩さなかったお姉さんからは、
未成年ながらにして母親のような包み込む優しさと父親のようなたくましさが感じられました。