「い、家出!?」
みんなは、驚き声を上げた。……かと思えば、すぐにやれやれといった表情に変える。
「……もう、しんちゃん、また家出するの?またママに怒られたの?」
みんなも、分かってたようだ。しんちゃんがこんなことをするのは、これまで何度もあったことを。
「……そんなんじゃないゾ」
「嘘付け。しんのすけが家出するといったら、そのくらいしか理由がないからな」
「風間くん、オラにも、複雑な事情があるんだゾ」
「なぁに?複雑な事情って……」
「それは、秘密だゾ。――じゃ、そういうことでー!シロ!行くゾ!」
(あ、待ってよしんちゃん!)
首を傾げる風間くん達に手を振りながら、しんちゃんは走り出した。
いつもの表情だけど、やっぱりどこか違うように見えた。
そのまましんちゃんは街の外れまで来た。
建物もかなり少なくなってきて、少し離れたところには高速道路も見える。
「お?――シロー!あれに乗るゾ!」
(あれ?)
しんちゃんが指さした方には、大型のアルミトラックが止まっていた。
横の自動販売機では、作業服を着たオジサンがコーヒーを買っていた。
「シロ!おいで!」
しんちゃんはトラックに向け走り出した。
そして荷台に手を掛けて、乗り込もうとする。
(だ、だめだよしんちゃん!)
僕は慌てて彼の服を噛んだ。
「もうシロ!何してんの!」
(ダメだよしんちゃん!ダメ!)
車は春日部のナンバーじゃない。見たこともない字が書いてある。
きっとこれは、長距離トラックなんだろう。
そんなのに乗り込んだら、僕達だけじゃ帰れなくなる。
僕は必死に止めた。
だけど、しんちゃんは僕を脇に抱え上げた。