「こんかところで寝たら、暑さでまいっちまうよ」
「ほーい……」
体を起こしたしんちゃんは、周りの風景とおじいさんの顔を交互に見渡す。
そして……
「……あんた誰」
「そりゃこっちのセリフや。坊主、こんかとこで何してんだ?」
「オラ寝てたんだぞ」
「そりゃ見りゃ分かるけど、そうじゃなくてだな……」
――グー
話しの腰を折るように、しんちゃんのお腹から凄まじい音が響き渡った。
その音が、会話を中断させる。
でもおじいさんは、すぐに笑い出した。
「ハハハ!なんだ坊主、腹減ったんか!」
「……うん」
「よかよか。話は後にしようかね。うち来て飯食うか?」
「おお!食う食う!」
そしてしんちゃんはお爺さんと歩き出した。
知らない人に付いて行ったらダメってあれだけ言われてるのに……
(まあ、あの人からは嫌な臭いがしないから、大丈夫だろうけど……)
仕方なく、僕も二人に続いて行った
そこは、小さな集落だった。
山間には田畑が広がり、民家が点在する。
夜道を歩き続けて、いつの間にかこんなところに来てしまってたようだ。
小鳥の囀りも聞こえるが、それ以上に蝉の鳴き声が耳に響く。
畦道から見下ろせば、視界は緑色に染まる。
自然が豊かで長閑なところだった。何よりも匂いがいい。
山の香りが鼻孔に広がると、とても落ち着いた気持ちになれた。
「――坊主、うまいか?」
「おお!うまいうまい!」
お爺さんの家に移動した後、しんちゃんはお爺ちゃんが用意したご飯を一心不乱に食べていた。
やっぱり、よほどお腹が空いていたようだ。
僕もご飯を食べる。ドッグフードじゃないけど、それでも久しぶりに食べるご飯は、とても美味しかった。
「ほらしんちゃん。いっぱい食べていいけんね」