家の奥から、お爺さんの奥さん――お婆さんが追加のご飯を持って来た。
とても朗らかに笑うその姿は、しんちゃんの二人のお婆ちゃんと同じだった。とても、優しい匂いがする。
「おお!いっぱい食うぞ!」
しんちゃんはラストスパートをかけるかのように、更にご飯を掻き込んだ。
そんな彼の姿を笑顔で見ながらも、お爺さんは切り出した。
「……ところで坊主、なしてあんなとこでねてたんか?」
「オラ、家出したんだぞ」
しんちゃんは躊躇することなく、そう返す。
すると、それまで笑顔だったお爺さんとお婆さんの表情が変わった。
「……家出って……しんちゃんの家は、どこなん?」
「春日部だぞ」
「春日部ってことは、さいたまか……いったいどうやってここまで……いや、それよりも……」
二人とも、難しそうな顔をしていた。
当のしんちゃんは、そんな彼らの変化に気付くことなくご飯を食べる。
「……あんた、やっぱり警察さんに……」
「………」
お婆さんの言葉に、お爺さんは更に険しい顔をした。
「……坊主、なんで家出とかしたんか?」
「………」
しんちゃんは、お爺さんの言葉に、ようやく箸を止めた。
全員が、しんちゃんに視線を送っていた。
その中で、彼は小さく声を漏らす。
「……父ちゃんも母ちゃんも、オラなんてどうでもいいんだぞ……」
たったそれだけを呟き、しんちゃんは再び箸を進め始めた。
どことなく、さっきよりも荒々しく箸の音が響いていた。
「………」
「………」
彼の言葉に、お爺さんたちは黙り込んだ。
とても、悲しそうな顔をしていた。