それから1週間後、オラは酢乙女グループ本社ビルの前にいた。
「ここが……」
摩天楼の真ん中にそびえ立つ、超巨大高層ビル……。見上げると、目眩を起こしそうになる。
「……やっぱ、超巨大企業だよな……」
しかしまあ、見上げてばかりでは前に進めない。
とりあえず、中に入ることにした。
入り口を入ると、エントランスホールが広がる。
しかしまあ、無茶苦茶広い。たぶん、あの工場くらいの広さがある。
何だか場違いなところに来てしまった気がする。
(……いかんいかん。今の内から呑まれてどうする。落ち着くんだ……)
一度大きく深呼吸したオラは、受付に話しかける。
「――あ、あの……」
「はい。いかがされましたか?」
「ええと……今日予定されている、採用試験を受けに来たんですが……」
「……あなたが……ですか?」
受付の女性は、どこか不審がるような目をしていた。受けるのが、そんなに珍しいのだろうか。はたまた、オラが何かマズイ格好でもしてるのだろうか。……まあ、確かに安物のスーツだが……
「……試験会場は、15階の会議室です」
しばらくオラを見つめた女性は、淡々とオラにそう説明した。
なんだか腑に落ちないけど、とりあえず、オラは10階に向かった。
「ここか……」
看板の立てられた会議室を見つけたオラは、一度深呼吸してドアを開けた。
ここに、ライバル達が……
「…………」
――目の前の光景に絶句する。
会場にいたのは、オラが想像していた人ではなかった。
皆、屈強な体をしている。顔に傷があったり、筋肉隆々だったり……。オラがドアを開けるや、全員が鋭い目つきでオラを睨み付けてきた。
その部屋だけ、海兵隊か何かの部屋のように異様な雰囲気だった。
「……間違えました」
オラは静かに、ドアを閉める。
そして入り口に立て掛けられた看板を、もう一度じっくりと眺めてみた。
そこに書かれていた文字は、何度見ても採用試験会場……間違いはないようだが……
何はともあれ、とりあえず中に入ることにした。