「……ひまわり……」
「……だから、なんだよ……。だから、なんなだよ!!」
ひまわりの姿を見た四郎さんは、何かを振り落すかのように声を荒げた。
「……僕には、そんな立派なお兄ちゃんなんていない!!そんな立派な人間にもなれるわけもない!!
誰もが強くなんてないんだよ!!弱い人間だっているんだよ!!
僕だって頑張ったんだ……必死に、頑張ったんだよ!!だけど、うまくいかないんだよ!!
何をしてもダメ!!どれだけ頑張ってもダメ!!全部全部全部……!!
期待しても、結局はみんなうまくいかない!!ぬか喜びだけさせて、あるのはいつもの毎日だけ!!
――そんな毎日なら……それなら……いっそ……!!」
「――いっそ、全部捨ててしまいたい……ですか?」
「―――ッ」
四郎さんの叫びは、たぶん、心の声だったんだろう。
それを聞いて確信した。
……この人は、誰かに助けてほしかっただけだって。
「……四郎さん、オラもね、強くはないんですよ」
「……しんちゃん……」
「父ちゃんと母ちゃんが死んだとき、オラ、どうすればいいのか分からなかったんですよ。それまで当たり前のようにいた二人がいなくなって……目の前には、泣きじゃくるひまわりしかいなくて……。
……本当はオラだって、ただ泣きたかったんです。でも、ひまわりがいる以上……お兄ちゃんである以上、それは出来ませんでした。
オラまで泣いてしまったら、この子はきっと、オラよりもどうすればいいのか分からなくなる……そう、思ったんです」
「……お兄ちゃん……」
「……正直ね、すごくキツかったんですよ。感情を素直に出すひまわりを見て、何度も羨ましく思ったんです。
どうしてこの子ばかり泣けるんだろう。どうしてオラばっかり強がらなきゃいけないんだろう……そんなことさえ思うこともありました。
――授業参観も、風邪引いた時も、進路指導も、卒業式も、入学式も……オラの隣には、いつも泣き続けるひまわりしかいませんでした」
「………」
ひまわりは、目を伏せた。それを見ると、やはり胸が痛くなる。
この話は、誰にも話したことがなかった。だけど、今話さないといけないと思った。
