出来る事はないけど、彼女を一人には出来ないと、俺なりに思った。
薬とか点滴とかの影響で眠ってるお母さんのベット脇にあったイスに二人で座って。
じっとお母さんの顔見てる彼女の横で、俺が泣きそうで。必死で我慢した。
彼女が泣いてないのに泣くわけにはいかなかったから、なんとか我慢できた。
お母さんは、入院して三日目に亡くなった。あっけなかった。
享年三十四歳で。そんなに若かったのかと思うと、全然納得がいかなかった。
葬式の手配とか役所でやる手続きとか、そんな物もやらなくちゃならないけど、
お婆さんも混乱してて、俺も彼女も、やった事もなくて戸惑って。
また親父に電話をした。「そうか。」それだけ言って、また来てくれて。
半泣きで礼を言ったらビンタが飛んできた。「あの子の前でその面するなよ」と。
親父は、色々な事を一つ一つ処理していってくれた。頼もしかった。
葬式、火葬。現実味が無いまま淡々と進んでいって。
お骨になったお母さん見ても、まだ全然、これ何かの間違いだろって感じで。
お婆さんは、赤い目して口引き結んで。それでもしっかり背筋伸ばしてて。
彼女は涙をみせなかったけど、表情無くしてて。ずっと俺の手、痛いくらい握ってて。
時々、彼女に視線落とした俺と目があって。小さく頷いて。
全部の事が済むと、親父は俺達アパートに送って、仕事の為にすぐ帰って。
俺は一人、自分の部屋でただ座ってた。呆然と。頭が全然、動かなかった。
夜中になって、彼女がドア叩いた。Tシャツ、ジャージ姿。すぐ部屋に入れた。
彼女は着たままだった俺の喪服掴んで。それでもまだ笑顔作ってて。
「あは。やっぱ、おばーちゃんの前じゃ、泣いちゃ駄目かなって。」
ぼろぼろ、涙こぼして。