でもかなり心拍数が上がって。寝られる状態になるまで、時間かかった。
何とか寝られて、朝は彼女に起こして貰って。送り出す前に、合い鍵渡した。
特に理由は無くて。お婆さんいないなら、こっち来てればって感じで、他意もなく。
それが彼女には嬉しかったみたいで。凄く大事そうにカギしまい込んだのを覚えている。
彼女は学校で、俺はバイトで。どっちも終わってから行くと、面会時間が過ぎる。
俺は中抜け出来たので、様子を見に行った。お婆さんは食後で。談話室でテレビ見てて。
いろんな検査があって退屈はしないけど、消毒と薬の臭いで鼻が変、みたいな事言って。
「一緒に寝て、言われた?」小声で、いきなり聞かれて、動揺隠せなくて。
「言われました。」正直に言って。「すいません。」つい謝って。笑われて。
「こっちがすいませんよ。あれ、恐がりのあまったれやから。」そうなると思ってたみたいで。
「あんたみたいな人、おってくれてよかった。」お婆さんはそれまでと同じ軽い調子で、
「私がどがいかなっても、あの子ぱっとほたったりせんやろうし。」方言混じりで言って。
ほたる、と言う表現。俺らの地方では、放っておくと言う意味で使うのが普通。
でも、捨ててしまうと言う意味に使う事もあって。前後の感じからして、後者の感じがして。
「しないですよ。」反射的に言って。「ありがとうね。」急にかしこまって言われて。困った。