夏に彼女が誕生日迎えた時はそれどころでは無くて、今回は何かプレゼントでもと考えて。
「欲しがってる物とかありますか?」ってお婆さんに聞いたら「着る物かねぇ。」って答えで。
じゃあそれで、みたいな事言ったら「そんな世話になっていいのかねぇ。」って心配されて。
「いいんじゃないっすか、クリスマスなんだし。」とか訳の分からない事、言った気がする。
でもいざ買うとなると俺一人で買いには行けなくて。クラスの女の子達に助け求めて。
「一緒に買いに行かないの?」「それだと多分、遠慮するから。」泣き入れて。頭下げて。
昼おごらされて。彼女の事聞かれて。動揺しまくって。からかわれて。反論して墓穴掘って。
いかついとか怖そうとか、そう思われてたらしい俺のキャラは、その時完全に壊れた。
結局、普通に着られる感じの物って事でいくつか選んで貰って、俺が最終的に決めて。
ハーフコートとフリースとジーンズとで、たしか四万くらい。安い方、だったらしい。
買って帰って。押入に隠して。彼女が押入開けたりする事は無いんだけど、近づくと警戒したりで。
クリスマスイブにはお婆さんがケーキ買ってくれてて、三人して食べて。
タイミングとか考えるのも面倒だったんで、その時彼女に普通に「これ。」って渡した。
「いいんですか?」「うん。」「ありがとうございます。」そんなあっさりした反応で。
部屋帰って少し時間があって。外したっぽい。そんな風に考え出した頃にドア叩いて。
ドア開けたら、雪舞ってる中に上気した顔の彼女がいて。全部、着てくれてて。
身長大体このくらい、で決めたサイズ、ちょっと大きめで。それが可愛くて。顔緩んだ。
彼女の髪に乗った雪払って。「気に入った?」聞いたら何度も頷いてくれて。やっと安心して。
部屋でコート脱いで、オレンジのフリースとジーンズ姿になった彼女。微妙に照れてて。
「どしたの?」「こういうの、初めてだから。何か。」はにかんで、視線落として。
「クリスマスとかも、久しぶりだから。」ちょっと湿った声になって、慌てた。
頭に手乗っけて。「泣くなー。」先に言って。でもちょっと涙流れた頬、親指で払って。