ドラえもん「その缶ジュース、『吸音機』だなッ!」
吸音機
周囲の音を全て吸収し、蓄えておくことができる道具である
音が伝わらなければ声を出していないのも同然、ウソのつきようがない
のび太〈君がもし人間なら……『自分の声が聴こえていない』時点である程度の憶測が立てられただろうに……〉
ロボットの場合、自分の声を発する際に内容をプログラムで認識してしまうため
『自分の発した音声を再び拾い処理する』という習慣が疎かになっている……
まして〈自称〉高級ロボット、身体機能の不具合あらば内部で認識できる彼にとって、その習慣ほど不要な物は無い
ドラえもんの盲点を突いたのび太の防衛策であった
ドラえもん〈……驚かされたけど……中身を飲んだ今なら音が伝わるだろう!?甘いねのび太!!〉
ドラえもん「のびた!!生き…」
のび太「『あははははははは』」
ドラえもん「!?」
のび太「『ハイこれ何でしょう』」
ドラえもん「そ…それは!!」
のび太「『それは…ウソ8OO〈エイトオーオー〉』」
ドラえもん「!!?」
のび太の手にはウソ8OO〈エイトオーオー〉
そしてもう一方の手に握られたスペアポケットから『鏡棚』が頭を覗かせていた
ドラえもん「どうしてだ!『フエルミラー』じゃ未来デパートで買った商品は増やせないぞ!?」
のび太「自分の道具をろくに把握できてないくせに、何とかなると思ってるから君は道具の扱いに機転を利かせる事が出来ないんだ」
のび太「これは『フエルミラー』じゃなくて『あべこべ世界ミラー』さ」
※あべこべ世界ミラー
現実と全て反対の『あべこべの世界』へと続く鏡
『あべこべの世界』では現実世界と同じ人間が存在している上に、皆の性格が逆になっている
のび太「さっき君がうろたえている時、『予定メモ帳』にこう書いたのさ」
今日、『あべこべ世界ミラー』の世界から来たドラえもん が
起床前のドラえもん に
押入れ で
『ウソ8OO〈エイトオーオー〉』と『水』をバレないよう交換し、後で鏡越しののび太に渡す
ドラえもん「じゃあさっき僕が飲んだのは…ッ!」
のび太「得意そうにただの水を飲んじゃって。あははははは」
ドラえもんの顔が怒りでみるみる赤くなっていく…!
のび太「書いた予定通りになる『予定メモ帳』、こう使えば不都合無くちょっとした歴史も変えれるのさ。」
のび太「本来ならすぐにでも機能停止させれたんだよ?どんな気分だい?」
生意気な口調で煽り、余裕の表情を見せるのび太だが
内心煮え繰り返っているのは、むしろ彼の方であった
タイムマシンで全て元通りになるとは言え
死ねと言われた挙句、両親と自宅を粉々にされたのだ
ドラえもんのプライドを完膚なきまでにズタズタにしなければ気がすまなかった
のび太「チェックメイトだよドラえもん」
のび太はそう言い終えた後、ウソ8OO〈エイトオーオー〉を飲み干した…
ドラえもん「のび太はshi」
のび太「のび太は死ぬ、アトカラホントは壊れない」
ドラえもん「くっ…」
※アトカラホント
言った事が後で本当になるくちばし
のび太「タンマウォッチは壊れない」
先ほど使ったあべこべ世界ミラーや予定メモ帳をはじめ
地球破壊爆弾、原子核破壊砲、人生やりなおし機、ジャンボガン、ハツメイカーetc…
逆転の手を無くすべく、思いつく限りの危ない道具とその類似品の名前を述べていく
ドラえもんも負けじと『安全ガス』や『相手ストッパー』等を取り出し、反撃の機会を窺ったが
のび太によりあらゆる手段を封じられてしまった
のび太「『のぞみ実現機』も壊れない、ドラえもん、ラストだ」
ドラえもん「ラスト?君、『ラスト』って言ったの?」
ドラえもん「うふ、ウフフフフフフ…くくく…」
ドラえもん「あいかわらず最後に間の抜けたミスをするなぁ」
のび太「……しまったっ!!」
のび太が最期と言ってもそれは最期にならない
ウソ8OO〈エイトオーオー〉の効果が続くかぎり…
ドラえもん〈言った嘘が後で本当になる『ソノウソホント』――――――君はまだこの名を述べてはいないッ!!〉
ソノウソホントを飲み込むドラえもん
のび太「ドラえもんが…!!」
ドラえもん「のび太が…!!」
ドラえもん、のび太「今飲み込んでいない道具の効果は…
ドラえもん、のび太「切れない!!」
お互い道具を封じる為に
全く同じタイミングで言葉が発せられた……!
両者予想外の展開に
精神的な疲労が額に滲み出す……!
のび太〈これで振り出しか……次の手は一体どう出るか……〉
ドラえもん「君がどうあがこうと関係の無い処刑方法を思いついたぞ…!!」
のび太「何ッ!?」
のび太が次の一声を発するより先に
ドラえもんは姿を消した