「けど、どんなにいいヤツだって、感覚は麻痺するからな」
「だから会長はやめたんですよね。あのバイト」
「うん。泣きそうな顔でそう言ったよ」
昨日、俺は例のバイト先に電話してあることを確認したんだよ。
会長がやめたときの給料が、さがっていたかどうか。それを聞いた。
意外なことにおっさんは俺の質問に答えてくれた。
給料はさがっていた。
俺が気づけたことだ。会長が気づけないわけがない。
つまり、彼女はわかってしまったんだ。
自分の中の罪悪感が消えはじめているってことに。
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「感覚が麻痺していく自分に、嫌悪感を感じたんだろうな」と先輩は言った。
「あのバイトにあの子は向いてたけど、向いてなかったんだよな」
「ボクもそう思います」
おっさんが言っていた『ある意味で素質のある子でしたから』という言葉。
今ならその意味も理解できる。
「ところでさ。お前、どうして今さらオレにあやまったり、
オレを許そうと思ったんだよ?」
「あのバイトから先輩にメールが来ていたから」と答える俺。
「なるほど」と先輩は空をあおいだ。
「まあさすがにオレも後ろめたくなったんだろうな」
