後ろまで禿げ上がってて、
額の上のあたりに孤島のように髪の毛が残ってるこの頭部
そうか、今日は親父の命日だったっけなと、
そのとき初めて思い出した
その時点でもう恐怖はなかった
ただ、下を向いちゃいけない、顔を見ちゃいけないと思い
(何故そんな風に思ったのかよくわからないが)
そのまま水を飲み終わるまでじっとしていた
ふっと、両手首を掴んでる感触が消えると、
もうそこに親父の姿はなかった
台所のオフクロの所に戻ると
「手首まできちんと洗いなさいね」
とだけ言われ、それに従った
手を洗い終わって、もう電気点けていいのか?と聞くと、
頷いたようなので台所の照明を点けた
明るくなった台所で、オフクロはどこか呆けたような表情でしばらく立っていたが
ザバザバと水が流れる音にふっと我に返ったかのように
「なに水を出しっぱなしにしてるの! 勿体無い!」
いきなり怒鳴られた