みさえ(初めは電話だった。単なるいたずら電話だと思った)
みさえ(それがどんどんエスカレートして、彼の実家にも取り立てが行った)
みさえ(家に張られた貼り紙、取り立て屋の怒鳴り声…)
みさえ(ご近所には白い目で見られて、しんのすけも暗くなっていった)
ひろし(川口はヤバイ所から、かなりの金額を借りていた)
ひろし(うちの親父にも、義父母にも頼れる金額を超えていた)
ひろし(俺の保険金でも足りない)
みさえ(彼の保険金では足りない。私の保険金でも足りない)
みさえ(退職したばかりの父にも迷惑をかけたくなかった)
みさえ(これは私達の問題だ)
みさえ(他人に頼らず、私達で解決したかった)
ひろし(はじめ離婚してから、俺だけ死のうと考えた)
ひろし(しかしみさえは頑として首を縦には振らなかった)
ひろし(家族でしょう?一人で抱え込まないでと、主張するみさえとは何度も言い合いになった)
ひろし(それでもみさえは譲らず、結局はみんなで仲良く心中という事になった)
ひろし(でも、これで良いのか?)
みさえ(みんなで心中が、一番良いのよ)
みさえ(きっと天国はいい所)
みさえ(しんちゃんも昔の様に自由に遊べて、ひまわりもお腹を空かせる事がない)
みさえ(彼も余計な心配はせず、私はそんな彼や子供達を見守りながら、心穏やかに過ごせるだろう)
みさえ「…あなた?」