だが俺は足を怪我していた事をすっかり忘れていた。
つまりこけたんだな。
木の根っこに鼻ぶつけて鼻血出た。
ずるずる足引きずりながら
「とにかく逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ」
って這いつくばって進んでいたら、
視界にもっさりパサパサな毛並みの足が見えた。
「小熊……」
って思って顔を上げたら
ただの熊だった。
後ろ見ると小熊はまだ山菜食ってた。
もう一度、熊見た。
熊の口、血だらけでなんか全てを悟ってしまった。
「あ、イノシシこいつだわ」
って。
死を覚悟して、もう逃げられないと観念してひれ伏した。
だが、何秒たっても熊は襲ってこなかった。
熊の鼻息が聞こえるだけだった。
俺、顔を上げる。
熊「何よ」って顔。
『あー親子だなあ』
とか思った。
俺、ゆっくりと立ち上がる。
熊も何故か二本足で立ち上がる。