女母「あの子は、自分でできるって言うかもしれないけど、可能な限り車椅子を押してあげてほしいの」
男「・・・そうですか」
女母「あまり体力がある方ではないから」
男「そうですね・・・・でも女さん嫌がりそうですね」
女母「うん。いつもはね。でも、あなたなら大丈夫だと思うから」
男「・・・そうですかね」
女母「せっかくのデートなんだから、疲れちゃって休んでばっかりは嫌でしょう。あの子も、あなたも」
男「いや・・・えっと・・そういう訳じゃ」
女母「ふふ・・・友達と遊びに行くのは久しぶりでちょっと心配だけど、あなたを信じてあの子を預けますので、よろしくお願いしますね」
男「あー・・・えっと、はい」
女「・・・行きましょうか」
壁に手をつきながら、ゆっくりとした足取りで女がリビングに入ってきた。
長い髪は、背中で緩く留められていた。
女は玄関に置かれた車椅子に座ると、リボンのついた麦わら帽子をかぶった。
女「行ってきます」
ガチャ
男「・・・」がし
女「え、ちょっと。自分で動かせるわ」
男「いや、今日はオレが押すよ」
女「大丈夫よ。言ったでしょ?自分でできることは自分でやるって」
男「・・・お前の親にも言われたんだよ。押すのだって疲れるだろ?今日は一日中外なんだから無駄な体力使うなよ」
女「お母さんが余計なこと言ったのね・・・まったく」
男「それに・・・せっかくいい服着てるんだから無駄に汗かくな」
女「・・・服のこともお母さん言ったの?」
男「ん?服の事?・・よく分かんねーけど・・」
女「そ・・・そう」
男「?」
女「・・・でも、あなたが無駄に疲れてしまうのも気が引けるから・・・あなたが疲れたら自分で動かしますから」
男「・・・おう」