昼休み
数学教師の言葉を頭の中で何度も反芻していた。
「彼女を笑わすには彼女をもっと知る事です」
今までの女さんとの会話を思い返しても、笑わすこと前提の会話ばかりで彼女の話をろくに聞いていなかった。一方通行でひとりよがりな会話ばかりだった。会話とも言えないものだったのかも知れない。
笑子「どうしたの?真剣な顔して。ご飯食べないの?」
男「笑子、知るってどういうことだと思う?」
笑子「え?知る?唐突だなぁ。うーん」
笑子は腕を組んで首を傾けた。こいつが何かを考える時の癖だ。小学生の頃からか進歩がない。
笑子「例えばさ、徳川埋蔵金が何処にあるかってまだ誰も知らないよね」
男「埋蔵金?知らないなあ」
笑子「ある日男の押入れの奥から徳川埋蔵金の地図が出てくるの。そしたら男は徳川埋蔵金を発掘できるよね」
男「なんの話だよ」
笑子「でもさ、男が徳川埋蔵金の在処を知ってる事が周囲にばれたらどうなると思う?多分狙われるよ、下手したら殺される」
突然物騒になったな。こいつは何を言いたいんだ?
笑子「知る事で宝物が手に入るかも知れないけど、その分リスクも伴うの。」
男「・・・そんなに大変な事なのかよ」
笑子「知らなければ良かったって良く聞くでしょ?そういう事も多いんじゃないかな?」