もういいでしょう。
もう十分でしょう。
もう、大丈夫でしょう。
さぁのび太、戸を開けろ、窓を開け。
押入れの隅に置いてあるタケコプターでドラえもんのところに飛んでいくんだ。
それまで山の如く動かなかった戸がほんの少しだけ、自らの手で開くことができた。
今まで暗い押入れにいたせいなのだろう、月の光でさえ眩しく感じる。
あとは一気にその手を横に引けばいい。
ただそれだけで、新しい一歩を踏み出せるんだ。
ただそれだけで、自分の過ちの一つをなくせるんだ。
――開いた。
まるで自分の四肢が他の生物にでもなったかのように動き始める。
自らの意思で動かせるようになったと感じられるようになったのは丁度一本杉に着いたときだった。
のび太「ドラえもん!」
発声したのは何年ぶりだろうか。
そこにはモニター越しに見た通りの光景が広がっていた。
一本杉の下で活動を停止しているドラえもん。
ジャイアンとしずかちゃんの、死体。
早くドラえもんの活動を再開させなくては。
だがここで僕の命運は尽き果てたらしく、後ろから不気味な足音が聞こえてくる。
スネ夫「あ~のび太~久しぶりだなぁ」
スネ夫「丁度良かったよ、勢いあまって消しすぎちゃって麻婆豆腐の校歌を歌う人手が足りなかったんだ」
スネ夫「けど……やっぱりいいや。校歌を歌うのは僕と天使ちゃんだけで十分だ」