夜
シンデレラ「あの……食事の用意ができました……」
継母「まぁ! 相変わらず、美味しそうだこと!!」
長女「はぁ、今日も美味……。これではいつまでたっても外食にいけないわね」
次女「そうですわね。これも全部、シンデレラがこの家にきてからですわ」
三女「食費が浮いて家計も大助かりだわ」
シンデレラ「も、申し訳ありません……」
継母「全く!! もう少し不味くつくってもいいのよ!?」
長女「そうですね、お母様。常にレストランの味を越えられては、街のコックも困るでしょうし」
次女「シンデレラ!! このソースはなに!?」
シンデレラ「そ、それは、トマトを……つかった……」
次女「後でレシピを渡しなさい!!! 今度、真似するから!! いいわね!!」
シンデレラ「は、はい……わかりました……」
三女「シンデレラ!!! おかわりはあるの!?」
シンデレラ「い、いっぱいあります……すいません……」
継母「ごちそうさまでした」
シンデレラ「あの……では、お風呂の準備を……」
長女「お風呂の掃除もしてくれたんでしょうね?」
シンデレラ「はい、しました」
長女「なら、貴方から入ればいいじゃない」
シンデレラ「そ、そんな!! 滅相もありません!! お母様よりも先に入るなんて……!!」
次女「あなた、いつも最後に入ってるわよね? 理由でもあるの?」
シンデレラ「そ、それは……」
三女「私、知ってますよぉ、お姉様。この子が最後に入る訳を」
次女「あら? そうなの?」
シンデレラ「あ……あ……お姉様……」
三女「シンデレラ、出るときにカビが生えないようにきちんと床とか壁を拭いていますのよ? どう思います?」
長女「はぁ……なんてこと……。今日は私が最後に入るわ」
シンデレラ「で、でも……!!」
長女「姉に反論するつもり? 許さなくてよ?」
シンデレラ「わ、わかりました……。では……」
継母「早くでてきたら引っぱたから」
シンデレラ「えぇ……」
次女「お母様。好みの入浴時間は人それぞれですから」
継母「あら、そう? なら、好きにするといいわ」
シンデレラ「は、はい、失礼します……」
三女「ごゆっくり」
長女「……シンデレラがここに来てから今日で何日になるのかしら?」
次女「春先にお母様が等身大のお人形を持って帰ってきたと思ってしまったあの日から、既に3ヶ月以上が経過しています」
長女「もう4ヶ月になるというのに、シンデレラは一向に心を開いてくれず、私たちに遠慮ばかり」
三女「お姉様たちが素直に褒めないからではありませんこと?」
次女「ふんっ。知ってるんだから。ヌイグルミを直してくれたシンデレラに大声で怒鳴ったことはね」
三女「あ、あれは!! まさかそんなところまで気を回してくれるとは思ってなくて……それで……どう言っていいのか……」
長女「よく妹にそんなことがいえるわね。貴方だって、シンデレラに対してまともなお礼は一度も言ったことがない癖に」
次女「そ、それは、お姉様も同じのはずですわ!!」
長女「ぐっ……。でも、なんかこう、露骨に褒めるのは馴れ馴れしい気がするでしょ?」
次女「それは……そうですが……」
継母「やめなさい。見苦しい」
長女「しかし、お母様。お母様もシンデレラに対しては遠まわしに褒めるばかりで、逆にプレッシャーを与えていらっしゃるのでは?」
継母「……そうなの?」
次女「ええ」
継母「そ、そんな……そんなつもりは……」オロオロ
長女「どうして、私たちはこう褒めるのが下手なのかしら……」
次女「はぁ……」
三女「シンデレラぁ……」
シンデレラ「あのぉ……」
継母「あら!? もう出てきたの!? 早いわね!!」
長女「しっかり温もらないと風邪を引くわよ? その程度の知識もないの?」
シンデレラ「す、すいません!! お姉様が待ってると思うと……あの……」
長女「やっぱりそういう気の使い方をするのね。ふん。予想通りすぎて面白くないわね」