シンデレラ「よいしょ……よいしょ……」ゴシゴシ
三女「……シンデレラ?」
シンデレラ「なんでしょうか?」
三女「あの……クマの……あれ……」
シンデレラ「あの、なにか?」
三女「……ありがとう」
シンデレラ「え……」
三女「って、ヌイグルミが言っていましたわ」
シンデレラ「お姉様のヌイグルミ、しゃべるのですか?」
三女「そうよ? 文句ある?」
シンデレラ「いえ!! そんな!!」
三女「……ところで、シンデレラに訊いてみたいことがあったの」
シンデレラ「な、なんでしょうか?」
三女「お……お姉様のなかで、誰が一番、す、すきなの?」
シンデレラ「す、好きですか……? えっと……それは……」オロオロ
三女「どうなの?」
シンデレラ「そんな決められません……」
三女「全員嫌いなの!? はぁぁ!? なにそれ!? どこがダメなの!? いってごらん!! さぁ!! はやく!! すぐに矯正するから!!!」
シンデレラ「いえ、あの、心から感謝しています。こんな私をこの家に置いてくれているだけでなく、きちんとした部屋まで……」
三女「当然でしょ? 何を言っているの?」
シンデレラ「私はそれだけで胸がいっぱいで……」
三女「……」
シンデレラ「だから、決められません……誰が一番なんて……」
三女「で?」
シンデレラ「はい?」
三女「わ、わわ、私のことはどうおもってるザマス?」
シンデレラ「えっと……」
三女「正直に」
シンデレラ「か、可愛い……なって……」
三女「可愛い?」
三女「姉に向かって可愛い!? 可愛いですって!?」
シンデレラ「い、いえ、あのいい意味で可愛いと……!!」
三女「鏡を持ってきなさい」
シンデレラ「はい?」
三女「鏡を持ってきなさいって言ったのよ」
シンデレラ「は、はい!!」タタタッ
三女「……」
シンデレラ「――持って来ました!!」
三女「自分に向けなさい。ほら、早く」
シンデレラ「はい……」
三女「何が映ってるかしら?」
シンデレラ「私です」
三女「そう。シンデレラよ。その顔でよくもまぁ、私に可愛いだなんていえたものね。なんて答えていいかわからないわ」
シンデレラ「私もこの鏡の意味がさっぱりです」
三女「で? 私のどんなところが可愛いわけ?」
昼 リビング
次女「あら?」
三女「……」ギュッ
次女「食事の時間よ? そのクマは部屋に置いてきたらどうなの?」
三女「私の自由ですわ」キリッ
長女「お行儀が悪いこと。淑女には程遠いわね」
三女「なんとでも仰ってください。これはシンデレラの所為ですもの」
長女「なんですって?」
シンデレラ「食事の用意ができました」
長女「シンデレラ? この子に何を吹き込んだわけ?」
シンデレラ「え……」
三女「さぁ、食事の時間よ、セリーヌ?」
長女「ヌイグルミに名前までつけて……。どういうことなの?」
シンデレラ「お姉様の可愛いと思うところを訊かれたので……ヌイグルミを抱きしめているところだと言っただけなんですが……」
次女「そんなことを言ったの? シンデレラ、調子にのるのは私の長所を挙げてからにすることねっ」