【※やり直し※】10年前に戻って人生をやり直すことに・・・僕は10年分の巻き戻しを、まったく無意味にしてみた。

自分がこれから犯す間違いが分かっていても、
あえて全部、そのまま繰り返そうって思ったんだ。

十年分の巻き戻しを、まったく無意味にしてやろうってわけ。

これから起こる事件や災害、危機や変革のことも
大体頭に入っていたけど、僕は口をつぐむことにした。

とにかく、徹底的に一周目を模倣しようとしたんだよ。

二周目の人生は、ちょうど十歳のクリスマスから始まった。

僕がそれに気付けたのは、枕元に置いてあった、
スーパーファミコンの入った紙袋のおかげだったんだ。
当時はそれが欲しくて仕方なかったんだよ。

紙袋の中には、一緒にゲームソフトも入っていた。
そのゲームの言い方を借りれば、僕の人生は、
『つよくてニューゲーム』にあたるわけだな。

結露した窓をパジャマの袖でこすって外を見ると、
まだうす暗く、雪に覆われた街が一望できた。
かなり寒いはずなんだけど、子供の体は温かかったな。

僕が紙袋をごそごそやっていたせいで、
二段ベッドの下で寝ていた妹が、目を覚ました。
妹は眠たげな目で枕元のテディベアを眺めて、
少し遅れて、「わあー」と歓声をあげた。

僕ははしごを下りて、妹のベッドに腰掛け、
テディベアに夢中な妹に、「なあ」と話しかけた。

「兄ちゃんは、十年後から戻ってきたんだよ」

妹は寝ぼけた様子で、「おかえりー」と笑った。
僕はなんだかそれが気に入っちゃって、
「ただいま」と言って妹の頭を撫でた。
妹は不思議そうな顔で僕の顔を見つめた。

僕は自分の最高の思い付きを誰かに披露したくて、
目の前にいる七歳の妹に、こう言った。

[ad1]

「今の僕には、これから自分が犯す過ちだとか、
本当にやるべきことというのが、分かるんだ。
今からなら、神童にだって、予言者にだってなれる。

でも、僕はなにひとつ変える気がないんだ。
前と同じ人生を送られれば、それだけで十分だからね」

テディベアを抱えた妹は、僕の顔をぼうっと見つめて、
「よくわかんない」と正直なところを答えた。

一周目の再現に関して、僕は妥協しなかった。

周りの連中をコケにしたくなるのを我慢して我慢して、
わざわざ一周目と同じ事故に遭いさえしたんだ。
何をするにも、手を抜くことに真剣だったね。

我ながら、僕はよくがんばった方だと思うよ。
それでも、蝶の羽ばたきひとつ程度の違いで、
人生ってやつは、かなり変わってしまうものらしい。

二周目に入って五年も経つ頃には、僕の人生は、
一周目のそれとは、大きく様変わりしていたんだ。

何から話せばいいかも分からないけど、
とにかく、一から十まで変わってしまったんだ。

一言でいうとね、僕は、落ちぶれたんだ。
一周目の人生からは、とても考えられないほどに。

理由は後で詳しく説明するけど、一例を挙げると、
一周目で親友だった人物にいじめられたり、
一周目で恋人だった女の子にふられたり、
一周目で通っていた高校の受験に失敗したり。

奇跡的な悪循環が生じたわけだよ。

そんなこんなで、高校生になる頃には、
僕はすっかり暗い人間になってしまっていた。

志望校には落ちて、ろくでもない高校に入って、
芽生えかけていた人間嫌いに磨きがかかってさ。
絵に描いたような孤独な人間になったんだ。

だから二周目の高校時代の思い出ってのは、
ほとんどないんだ。卒業アルバムも捨てちゃった。
寂しいもんだよ。修学旅行さえ苦痛だったんだ。

でも、ひとつだけ、悪くない思い出がある。

高校二年生の冬、ひどい吹雪の日だったな、
僕はがたがた震えながらバスを待ってたんだ。

その時、僕はふと、少し離れた場所で
僕と同じようにバスを待っている女の子が、
見たことのある顔だってことに気付いた。

いや、忘れるはずもないんだ。
それは一周目では僕の恋人だった女の子だ。
十五歳で付き合い始めてからは、ずっと傍にいたんだ。

それが、二周目では、あっさり告白を断られてさ。
思えば、悪循環の始まりはそこだった気もする。

向こうは、僕に気付いてないみたいに見えた。
そうでなくても、僕の存在なんて、
とうの昔に忘れちゃってたかもしれない。

前のページへ 次のページへ