不思議と、どんな感情も湧いてこなかったね。
そうか、あの二人は死んでしまうのか。それだけ。
どちらかと言えば、喜ぶべきことだったと思うよ。
あの男のことが憎いことには変わりがないし、
あの女の子はどうせ僕のものにはならないんだし。
そう、手に入らないものなら、最初っからない方が幸せなんだ。
でも、次の瞬間には、僕はアルバイトを放り出して、
かつての恋人の手を取って走り出していた。
いやあ、自分でも意味わかんなかったなあ。
でも仕方ない話なんだ。これからすることが、
一人でどうにかできるものなのか分からなかったし、
話を信じて協力してくれるとしたら、彼女だけだろうからね。
デパートの中を駆け抜けていくサンタ二人を見て、
子供なんかは僕らを指差して騒いでいた。
実際、奇妙な光景だったと思うよ。
彼女が何も言わずについてきたのはさ、握られた手に、
どこか懐かしいものを感じたからだと思うんだよ。
なんでかっていうと、僕がまさにそのように感じたから。
外に出ると、既に吹雪になりかけていた。
僕は車に乗り込んでエンジンをかけた。
珍しく僕の頭は冴えわたっていたんだ。
さっき見たニュースの進行具合から言って、
間に合うかどうかの瀬戸際だったな。
そんな緊迫した状況なのに、一方で僕は、
おかしくて仕方がなかったんだ。