つまり僕は、僕の代役を務めるあの男を、
ぶっ殺してしまおうと思ったわけなんだ。
そしたらあの子も、また寂しくなって、
僕の方に傾くんじゃないか、ってね。
いやあ、追い詰められた人間ってのは、
本当にろくなことを考えないよ。視野が狭くて。
そういうわけで、僕の恋人奪還作戦が始まった。
別の言い方をすれば、ドッペルゲンガー殺害計画。
以後、僕は定期的にその男を尾行するように
なったんだけど、おかげで引きこもりが治ってさ。
皮肉なことに、殺害計画を思いついてから、
しばらく僕の性格はとっても明るくなるんだよ。
妹に指摘されて、僕は自分の変化に気付いたんだけど、
――そう、すっかり妹の話を忘れていた。
僕に匹敵するくらいの変化を遂げた妹の話。
本来、僕の妹は、運動と太陽をこよなく愛していて、
年中健康的に日焼けしている、活発な女の子だった。
ところが二周目においては、僕の影響を受けたのか、
読書と日陰を好む、色白の眼鏡の子になったんだ。
一周目を知る人から見たら、何かの冗談みたいだよ。
兄妹揃って暗い人間になって、家は毎晩お通夜みたいだったな。
両親も自分に自信がなくなったのか、嫌な人間になっていった。
いやあ、人一人の持つ影響力ってのは、馬鹿にならないね。
かつて僕と妹は、周りがあきれるくらい仲良しで、
僕に恋人ができるまでは、どこへ行くにも一緒だった。
でも二周目では、口をきかないどころか、
目さえ合わせようとしなかったね、お互いに。
妹は僕のことを嫌っていたんじゃないかな。
だって、たまに珍しく口を開いたかと思えば、
それは大抵、僕に対する文句だったからね。
「目つき悪い」とか。人のこと言えないだろ。