男「あ……あのさ」
少女「は、はい?」
男「着いたら、少しだけ話さないか?」
少女「は、い……か、構いません」
男「良かった……」
運転手「急停車にご注意ください。次は―――」
―――バス停
運転手「足元にご注意ください……発車します」
少女「着きましたね」
男「隣に座ってくれる?」
少女「はい」
男「あのさ……き、訊きたいことがあるんだけど」
少女「な、なんですか?」
男「ここで初めて挨拶して……えっと、次の日ぐらいかな?なんか言おうとしてなかった?」
少女「あ……」
男「あれ……気になってたんだ」
少女「あ……それは……あの……」
少女(そんな小さなことまで気がついてたんだ……でも……)
男「言えない?」
少女(今更……どうやったら大人の女性に見えるようになりますか、なんて……恥ずかし過ぎていえないよぉ)
男(やっぱり、突っ込みすぎた……?)
少女(でも……訊いてみたかったことだし……遠まわしに訊けば……)
少女「あ、あのですね……」
男「うん」
少女「えっと……私ってその子どもっぽいじゃないですか。背も低いし……胸もないし」
男「……うん」
少女「でも……どうにか努力してこう……もっと年相応に見える方法はないですかねって訊こうと思って」
男「それを俺に?」
少女「大人の男性なら知ってるかなって思ったんですけど」
男「あー……」
少女「ど、どうですかね?」
男「そうだな……」
少女「やっぱり……無理ですか?」
男「いや……そうじゃないよ」
少女「……?」
男「……俺は、そういう風に背伸びをしたり、お父さんのためにマッサージを覚えようとしたりする懸命な君が……綺麗だって思う」
少女「え……」
男「外見で言えば、確かに幼く見えるけど。でも、君ががんばろうとしている姿は魅力的だった」
少女「それって……褒めてないですよね?」
男「あー、そうかな?」
少女「体よく逃げます」
男「えー?そうかな?」
少女「そうです……もっと、ちゃんと言ってください」
男「な、なにを?」
少女「私は貴方のことが……好きなんだと思います」
男「え……?!」
少女「でも、まだ分からないんです。この気持ちがただの憧れなのか……年上の男性に対するただの憧れかもしれません」
男「……」
少女「だから、気付かせてください。私の気持ちが……恋なんだって」
男「それは……どうしたら……いいのかな?」
少女「―――貴方は私のこと、どう思っているんですか?」
男「そ、れは……」
少女「お願いします……」
男「……」
少女「……」
男「……す、き……だ」
少女「え?」
男「すき、だ……」
少女「聞こえません」
男「好き、だ」
少女「もう一度、お願いします」
男「聞こえただろ!?」
少女「……お願い」
男「好きだ……間違いなく、俺は君のことが好きだ……」
少女「……嬉しい。やっぱり……これは恋でした」
男「そ、そう……」
少女「あの……肩、揉ませてくれませんか?」
男「え?」
少女「上手くなったんです。させてください」
男「そうだな……今日はなんだか肩がこったし……お願いします」
少女「お願いされます」
男「お……確かに……これは……」
少女「どうですか?」
男「うん……きもちいい……ふう……あー、いいねえ」
少女「ふふ……あ、バイト料、きっちり頂きますからね?」
男「ええ!?そんな!?」
少女「当たり前です。高校生の女の子にタダで肩揉みさせるなんて、あり得ませんから」
男「わ、わかった。いくらだ?」
少女「―――そうですね。じゃあ、携帯電話の番号とアドレスでいいですよ?」
男「え……?」
少女「ほらほら、ちゃんと支払ってくれたら、今度から無料で肩揉みしてあげますから、ね?」
―――日曜日 バス停
少女「もう、つきま、したよ……どこ、に……いるんですかっと」