後輩女(男先輩遅いなぁ……)カチカチ
後輩女(あ、相模原からメール……)カチカチ
後輩女(………………)カチ
後輩女(イレギュラー発生……やっぱり対処がわかんない)
後輩女(まだまだ、男先輩がいないと……)
男「ただいま」ガチャッ
後輩女「遅いです。もっと早く帰ってくるべきです」カチカチ
男「少し前はお帰りなさいって言ってくれたのに……」
後輩女「はいお帰りなさい」
男「棒読みだねぇ。まぁ良いけど」
後輩女「相模原からイレギュラー案件の問い合わせが来ています。アドバイスをお願いします」
男「了解。三分待ってて。確認するから」カタカタ
後輩女「うー」
男「どうかした?」カタカタ
後輩女「どうして問題箇所がメール一発でわかるんですか?」
男「相模原は元々いたところだから、かな。他の拠点なら写真送ってもらうくらいはお願いするかもしれない。
そもそも相模原のラインを確立させたのは俺だし、向こうが考えてることは大体わかってるからね」カタカタ
後輩女「やっぱり、こういうことをするにはラインを経験するべきなんでしょうか」
男「どっちもどっちだね。ラインを経験してしまうと考えがライン工員向けになる。
ユーザー向けの考えはラインを経験していない人間の立場からの方が豊富に出ると思うよ」カタカタ
後輩女「でも、ライン構築のアイディアは男先輩のほうがたくさん出しています。わたしは全然……」
男「全然じゃないでしょ。埼玉のライン再構築のベースはほとんど書いていたじゃない?」カチカチ
後輩女「あれは男先輩が作ったラインを参考にしただけで、わたしのオリジナルじゃないです」
男「誰だって最初は真似から入るものだよ。初めから出来てたらノウハウなんて必要無くなる。
そもそも完全なオリジナルなんてこの世界にはもう無いんじゃないかな。全部何かしらを参考に作られてるから、
あまり気にすることなく良いと思うものを作ってみなさい」カタカタカタカタ
後輩女「男先輩」
男「はい」カタカタ
後輩女「お昼です」
男「はいいってらっしゃい」カタカタ
後輩女「今日は男先輩と一緒に行きます」
男「同期の子とは良いの? いつも一緒に行くあの子は」カタカタ
後輩女「はい、今日は行けないと言ってあります」
男「……ふむ、でも俺は今日は――」カタターン
後輩女「一緒に行く人なんていないんですよね? いえ、お返事を頂かなくてもわかってます。男先輩のことは私が一番わかっていますから。
私が男先輩と一緒にお昼に行ってあげます。いえ、男先輩は私とお昼に行くべきなんです。異論は認めません」
男「了解。三分待ってて。メール出すから」カタカタ
後輩女「今日はお外に食べに行きましょう。社食は飽きてしまいました」
男「そうだね。何が食べたい?」
後輩女「奢りですか?」
男「ものによるね」
後輩女「親子丼が食べたいです。桂花庵に行きましょう」
男「それなら出させて頂きます。行こうか」